ECサイトで取り扱う商品が決まったら、楽天市場やAmazon、Googleで検索してみてください。どのような商材にも必ず「市場」が存在します。市場があるという事はライバル企業がいる。という事ですね。
大手企業のマーケティング事例をそのまま活かそうとしても思うようにいかず、失敗してしまうことがあります。それは大手企業と中小企業では戦い方が180度違うから。
ランチェスター戦略は古くから様々な企業で活用されており、中小企業が大手企業に立ち向かうための戦略です。
ランチェスター戦略の歴史
ランチェスター戦略のルーツは軍事分析用に開発された「ランチェスターの法則」という数理モデルが原型となっています。
もともとは軍事用理論
1914年、第一次世界大戦の頃、エンジニアであったイギリス人、フレデリック・ランチェスターは戦闘機の開発に従事していました。彼は自分が開発した戦闘機がどのような戦果を挙げているのかエンジニアの視点から研究した結果、兵士数と武器性能が1つの戦闘力となり、敵に与える損害を決めることを発明します。この数理モデルが「ランチェスターの法則」として軍事分析に利用される事となりました。
日本生まれのマーケティング戦略
1970年代に起こったオイルショック。それまでの高度経済成長を続けていた日本は一転して不況に。この不況による市場縮小が進む中、当時コンサルタントとして活躍していた田岡信夫(1927〜1984)が、1972年に著書「ランチェスター販売戦略」を出版。多くの企業がこのランチェスター戦略を実践し、不況のさなかも勝ち残ってきました。
ランチェスター戦略とは
様々な業種に適用する事ができるランチェスター戦略。ソフトバンクの(創業者)孫正義、旅行代理店H.I.Sの(創業者)澤田秀雄、京セラの(創業者)稲盛和夫などなど、名だたるトップ経営者が実際にランチェスター戦略を活用し、今の地位を築き上げました。
ここでは具体的な数式は説明せず、概要を説明するので、もっと詳しく知りたいと思った方は、「ランチェスター協会」もしくは、各種出版本などでご確認ください。
ランチェスター第一法則
原始的な戦いの場合
攻撃力 = 兵士数 × 武器性能(質)
対戦する両者の武器性能に変わりが無い(刀・槍・こん棒)場合の攻撃力は兵士数に比例します。接近して一騎打ちをする場合は兵士数の多さで勝敗が決まります。
ランチェスター第二法則
近代的な戦いの場合
攻撃力 = 兵士数² × 武器性能(質)
ライフル銃や機関銃など兵器を使い、両者が離れた位置から戦った場合、攻撃力は兵士数の2乗に比例します。この根拠には確率の法則から導き出されます。
兵士数5人vs2人で戦った場合を見てみましょう。
弱者の戦略(差別化戦略)
弱者にとってランチェスターの法則から導き出された答えは「武器性能を高める」ということに繋がります。
ビジネスにおいて武器性能を高めるという事はどういう事でしょうか?その答えは「差別化」にあります。大手が採用しているマーケティング(武器性能)をそのまま真似しても、兵士数(経営資源)が少ない方が負ける。という事ですね。
その戦場(市場)で武器性能を高めるには、大手が思いもつかない新しい武器を作るか、大手がいない戦場(市場)で戦うか?兵士数が少ない中小企業が、競合他社との差別化をする事で戦いに勝つための戦略が下記の5つになります。
- 局地戦(活動地域の限定)
- 接近戦(顧客に接近する販売経路)
- 一騎討ち戦(競合が少ない方が勝つ確率が高い)
- 一点集中(総合力で勝負しない1点勝負)
- 陽動戦(他社が思いつかない販促活動)
強者の戦略(ミート戦略)
兵士数が多い大手はランチェスター第二法則の戦い方、総合的な戦いを行えば相手に勝てるという事が導き出されます。
これは弱者の戦略である差別化を封じ込め、同じ土俵に持ち込めば兵士数で勝てる戦略です。
この戦略は「ミート戦略」と言われ、総合的な戦いで他社を圧倒します。
- 広域戦(活動地域を限定せずに拡大)
- 遠隔戦(広告などの情報発信で弱者が接近する前に顧客獲得)
- 確率戦(品揃えを強化、競合の多さを重視)
- 総合主義(圧倒的な量で勝負)
- 誘導戦(価格競争など弱者を抑え込む)
弱者がナンバー1になるために(まとめ)
「戦場=市場」と捉えて提唱されたランチェスター戦略は、業種・規模問わずあらゆる企業に適用できる戦略です。ここで疑問になるのが「弱者」の定義ですが、ランチェスター戦略ではその市場のNo.1企業以外は全て「弱者」に当てはまります。
すでにECサイトを運営されている方でしたら、今行っているマーケティング戦略が弱者なのか?強者なのか?一度、全て書き出してみてはいかがでしょうか?
ECサイトにおける弱者の戦略をまとめてみましたので、ご参考いただければと思います。
局地戦
取り扱い商品の産地・製造地を限定し、地域色を高めるなど。
接近戦
ネットショップの場合は直接顧客と接する場面がないため、商品を発送する際に手書きのサンキューレターを同梱する、メルマガだけではなく年賀状や暑中見舞いなどを発送するなど、ネットだからこそ親近感を大切にする。
一騎討ち戦
競合が少ない市場を探す。すでに参入している市場がある場合は、さらに細分化した市場を見つける。
インテリア商材を取り扱っていたら、「インテリア→収納→本棚だけの専門店」や、さらには「マンガ本収納専門店」といった具合に細分化して戦略を立ててみましょう。
一点集中
これはどこにも負けない!という商品を1点でも作り出す。
陽動戦
名入れサービスや、記念日・誕生日サービスなど、大手が真似できない顧客が喜ぶサービスを考えてみましょう。